
テンナンショウ、仏炎苞(ぶつえんほう)の形が人気です
・学名 Arisaema
・科名 サトイモ科
・属名 テンナンショウ属
・開花期 4月〜5月
・休眠期 9月下旬〜2月
・難易度 初級者〜中級者向き
・楽しみ方 鉢植え、庭植え [テンナンショウの育て方] ■テンナンショウの特徴奇妙な仏炎苞(ぶつえんほう)をつけた姿が人気の山野草です。
仏炎苞とは、サトイモ科の植物に見られます。
多肉な花軸の周囲に、柄のない花が穂状に多数密生する
肉穂花序(にくすいかじょ)を包む大型の苞を差します。
テンナンショウの他、サトイモ科のミズバショウ、コンニャク、
ウラシマソウ、マムシグサ、アンスリウムなどで見られます。
これらの植物では、
色鮮やかな仏炎苞が観賞対象になっている物も多いです。
テンナンショウは、主に里山や深山の暗い樹林下に生えています。
局地的な分布や変異も多い植物です。
成長により雌雄が変化する性転換植物として知られています。
偏球型をした地下茎を持ち、その上部から多数の太い根を伸ばして、
時には子球を作ったり、匍匐枝を出して栄養繁殖をしますが、
この偏球茎が超えると雌、痩せると雄にと、
栄養状態によって性の転換をします。
名前の由来は、漢名「天南星」によるものです。
学名の”Arisaema”は、アラムの近縁種で葉に斑紋があるという意味です。
地下茎が生薬として利用されます。

ムサシアブミ
■栽培適地と品種・栽培適地直射日光の当たらない木陰が栽培適地です。
水はけの良い肥沃な用土が必要なため、掘った庭土に軽石砂と腐葉土、
あるいはバーク堆肥をよく混合して、植え付けます。
・用土と鉢水はけと通気性のある肥沃な用土を好みます。
赤玉土2:硬質鹿沼土4:軽石砂4に、
ピートモス10%を配合した用土が良いでしょう。
市販の山野草の土を利用しても構いません。
鉢は、開花球1個につき4号鉢を使用するのが一般的です。
山草鉢など、通気性の良い鉢を使用するとよいでしょう。
・主な仲間ウラシマソウ、ムサシアブミ、ユキモチソウが主な仲間です。
他にも各地に多彩な仲間が見られ、
日本に自生しているのは30種にも上ります。
海外にもアジアを中心に多数存在しますが、国内・海外種とも
大型種が多く、流通量も少なく、栽培が困難です。
・品種ウラシマソウは、本州から九州にかけて分布しています。
糸状の付属体を浦島太郎の釣り糸に見立てて、
ウラシマソウ(浦島草)と名付けられました。
ヒメウラシマソウは、仏炎苞は小さく中がT字状に抜けているのが特徴です。
イナヒロハテンナンショウは、長野と岐阜の一部に生息する小型種です。
よく開くストライプの仏炎苞が特徴です。
アシウテンナンショウは、
ヒロハテンナンショウの仏炎苞に色が入っているのが特徴です。
中部と近畿に多く見られます。
キリシマテンナンショウは、別名ヒメテンナンショウといいます。
仏炎苞は丸みがあり、 舷部の先端が下に伸びます。
九州に分布する中型種です。
カミコウチテンナンショウは、本州中部の一部に見られます。
葉に先駆けて開く仏炎苞が、ずんぐりしているのが特徴です。

ウラシマソウ
■植え付け・植え替え・植え付け根が動き出すと傷みやすいため、休眠期の晩秋から早春の、
11月〜3月が植え付け適期です。
鉢底にゴロ土を1/4〜1/5の深さまで敷き、元肥をまきます。
用土を入れ、鉢の深さの2/3の位置に球根を植えつけます。
覆土は2cmとします。
植え付け後は軽くサッと水を与え、
2日後くらいにたっぷり水を与えると、球根が傷みません。
植え付け後は、凍結させないよう、無加温フレームや物置などで保護します。
・植え替え植え替えも、植え付け同様11月〜3月が適期です。
鉢から取りだすとサトイモのような球根があるので、
新球の皮を剥がさないよう注意しながらよく水洗いをして、
球根に付着している古根などを取り除いてから植え付けます。
植え替えは毎年が理想的ですが、2年に1回でも構いません。

ムサシアブミ
■栽培管理芽出しから開花までは20〜30%遮光の明るい半日陰で管理します。
葉が展開したら、50〜70%遮光し、ゆったりと育てます。
花は、雨に当たると傷んでしまいます。
つぼみができ始めたら、雨の当たらない場所に移動させます。
夏は葉が焼けるようならさらに遮光し、風通し良く管理します。
休眠期に入ったら、無加温フレームやハウスの棚下で、
凍結を避けます。
・水やり生育期は1日1回、たっぷりと水を与えます。
水を好むため、水切れさせないよう注意します。
品種によっては梅雨の頃から地上部が枯れ始めるので、
つい乾かし気味になりがちですが、この時期の乾燥は新球の成長以前に、
株の枯死につながりかねません。
休眠中もあまり乾かさずに、常に用土に湿り気がある状態を維持します。
・追肥芽が出たら置き肥を施します。
さらに、葉のある間は、液体肥料を月1〜2回施します。

ウラシマソウ

ウラシマソウの実が赤くなってきました
■増やし方ウラシマソウやヒロハテンナンショウの仲間は、分球で増やせます。
休眠すると、親球のわきに小さな球根がいくつか出来ています。
自然に外れているものは独立させ、植え付けます。
ただし、外れていないものは無理に外しません。
自然に外れていた分球も、子球で芽の形成が少ない場合は
1年休眠して発芽は2年後になるため、気長に待ちましょう。
実生もできますが、雌雄異株のため、結実しにくいです。
果実ができたら、果肉を洗って種を取り出して、覆土1cmほどでまきます。
発芽は一般的に翌年ですが、種類によっては1年目は発芽せず、
地下で球根を形成して、発芽が2年目になるものもあります。
実生で増やしたい場合は、人工授精をすると良いでしょう。
開花3日後〜1週間以内に、仏炎苞をむいて、肉穂花序をむき出しにします。
この時、花粉が出ていれば雄花、先端が突起になっていて艶があれば雌花です。
綿棒などで雄花の花粉をつけて、雌花の柱頭に花粉をつけてあげます。
受粉後は、2週間程度水やりなどで花に水をかけないようにすることが、
結実させるコツです。
■病害虫球根の尻腐病、多湿による軟腐病や立枯病、ウイルス病などが見られます。
花後に枯れ始めた茎からナメクジやウジなどが侵入して球根を食害します。
花茎が落ち始めたら切除して、
空洞部分にティッシュペーパーなどを詰めておくと、虫の侵入を防げます。
冬は動物の食害にも注意します。
>>もっと山野草を見てみる